あそびのデザイン

冬に直した自宅用のオーバル皿ですが、ひびが入っていた部分を直すだけではなく、少し模様を足してみました。

元々のお皿のデザインを汲んで、あそびで描いてみたのですが、お料理などを入れてもアクセントになるので、これがなかなか楽しいです。

自宅用のお皿は実験台でもあるので、ご依頼頂いたお預かりの器ではやらないことにも挑戦しながら、暮らしの中で使い続けています。

外側もこんな感じ。

金消し粉を使用。

ちなみに加飾をする前は、ただ漆でヒビを繕っただけの状態ですかっていましたので、こんな感じでした↓

スッと漆の線が入っているだけ。だいぶ印象が変わりますね。

お直しをご依頼いただいた場合、仕上げは基本的に、金粉・銀粉・真鍮粉(いずれも消し粉というマットな仕上がりの金属粉です)の加飾仕上げからお選びいただくようにしているのですが、器のデザインによっては加飾しないほうがクールに仕上がるお品もありますし、大げさなことをしなくても直るお品もありますので、一様に「金継ぎ(金繕い)」を勧めるのもどうなのかな~?と思うことがあります。金継ぎが流行って、もてはやされるようになって久しいですが、「金」は飾りにすぎません。

金属粉による加飾は、酸化して色が変わったり(その変化も一興なのですが)、何度も何度も洗ううちにどうしても剝れてしまったりします。

超ハードに日常使いする器ならば特に、金属加飾が取れてしまってがっかりするよりも、最初から色漆仕上げのほうが良いのではないかな?とも思ったり…。

いずれにしても器と対話しながら、お客様とも相談しながら、進めたいと考えています。

今回のようなあそびのデザインを入れて欲しいという場合にも対応しますので、ご相談下さい。

骨董市

毎月、骨董市を楽しみにしていたのですが、コロナの影響で当然のごとく、頻繁に行っている町田天満宮での骨董市も、大和プロムナードでの骨董市もお休み。再開はいつになるのでしょう。まだ今の段階では、わざわざ混雑している場所へ出かける気にもなれないのですが、そもそもイベントが中止されるという現状に寂しさを感じます。

古いものには、今お店に並んでいる品物からは感じられないような面白さがあります。その当時の暮らしぶりがうかがえると、自分の中で勝手に良い感じに解釈して、いいなぁなんて妄想を膨らませたり、自分の理想の暮らしと照らし合わせたりしています。勉強になることも多くあります。買い物しようとしても、目的のものが見つかるとは限りませんので、期待もしません。お買い物というよりは、現実逃避が目的かも知れません。特に当てもなく、色んなものを見聞きしながら、ブラブラするのが好きなのです。

 

買い物の基準は実に曖昧で、ピンときたものとしか言いようがありません。とりあえず、あっても保管に困らなそうで、実用できるものをなるべく選ぶようにしています。

最後に行ったのは一月だったかと思います。その時購入したのは大きめの三段重。普段こんなに大きなものは買わないのですが、とても気になる存在だったので迎え入れました。

木目を活かした塗りのシンプルなお重で、状態も良くて気に入りました。少し角のあたりは塗装の剥げがあるので、自分で少し補修するつもりで購入しました。底面にはこんな印もありました。

「伊勢山田市、国産漆器問屋」調べてみると、今でも伊勢市周辺で作られている伊勢春慶という塗りで、赤みがかった色が特徴なのだとか。確かに飛騨の春慶塗より赤い気がします。豪華な装飾はありませんが、逆にこのシンプルさが現代の食卓にも違和感なく溶け込みそうです。伊勢で重箱などの生産が盛んになったのは江戸後期~明治にかけてとのことですが、はて、この重箱は何歳なのでしょう?もっと新しいものなのかしら?それに「千田、安田屋」の焼き印、東京の千田にあった安田屋さんという食事処かなにかで使われていたものが今に残るのかどうか。勝手な推測です。何がどうして伊勢で作られたものが私のもとへ来たのか、それを考えるだけで面白いです。

誰かの誕生日とか、人が多く集まるときとか、お料理をいろいろ並べたい時に使ってみようと思っています。

それにしても、早く世界に平穏が戻ると良いですね。

巣篭もり2ヶ月

巣篭もり期間、まだ伸びそうですね。

過酷な医療現場の方をはじめ、こんな中でも毎日働いて下さっている方方には本当に頭が下がります。家族のために働く夫にも感謝を忘れないようにしたいです。

一方で私は四六時中息子と過ごしており、まともな仕事ができていません。

金継ぎのご依頼を下さる方には普段以上にお待ち頂くことになってしまい大変申し訳ありません。


私は原則、家族が家にいる時はかぶれさせてしまっては大変なので、漆を使う作業を行っていません。
特になんでも触りたがるやんちゃな息子は心配。「ダメ」と言っても2秒後には何を言われたか忘れてダメなモノを触るのです。こわい。

前職で漆教室を運営していた時、触っても大丈夫な人から本当にひどくかぶれて医者送りになった人まで、色々と目の当たりにしました。重症になると大変ということを知っています。私は自分の仕事道具で、誰かをかぶれさせたくありません。なのでこの2ヶ月、漆はしまったままになっています。

ホームページすらまともに更新できておらず、お恥ずかしい限りです。メールには随時返信させて頂いてますので、修理ご検討の際にはご相談ください。

今ご依頼頂いた場合、お時間を頂戴してしまうことは間違いない状況なのですが、中にはそれでも、とご依頼下さる方がいらっしゃるので本当にありがたく思っております。

こんな時だからこそ、大切なものを見直してみるのも良いのかもしれません。お預かりしたものは大切に、丁寧に向き合わせていただきます。よろしくお願いいたします。

まずは健やかにお過ごしください。

面白く、愉しく

今年も謙虚に素直に器と向き合い、学ばせてもらいたいと思います。よろしくお願いします。なにより去年踏み出せたホームページの第一歩、大事に育てていきたいです。

年末のバタバタで、金継ぎの作業が一ヶ月以上滞っていました。連休明けからまた再開できそうなので楽しみです。

写真は年末(と言っても11月)に伺わせて頂いた、私の漆と金継ぎの師匠・藤原啓祐さんの個展で購入してきた品物です。オヤツにピッタリ。かわいい。食事の際、漬物など添えるのもいいでしょうね。

一人で金継ぎしていると、モノの命のこととか消費社会の現在とかを色々と、考えてしまって、悶々としてしまうことがあります。そのことを少しの時間でしたがシショー藤原さんに聞いてもらえて、フッと肩の力が抜けました。

あらゆるモノを直してあげたい…というか直してあげるべきなのでは?!と暴走気味の妄想をする私に

「あらゆるモノと言っても、全部は無理やで」と笑って諭してくださったこと、忘れません。藤原さんでも直せないものがあるということです。そっかー、そりゃそうだー、と気が抜けました。

モノは完成した時、ピークの輝きを放ちます。そこからは下り坂。時の経過に人間誰しも抗えないのと同じく、モノも使われて傷つきながら最後は土に還ってゆくのが自然の流れ。なにもかもを、永くこの世につなぎ止めようとしなくてもいいのだと思いました。

藤原さんは、とても楽しそうに仕事をします。木彫りの時も、漆の時も、教室だと特にお喋りがとまらない愉快な方です。だから藤原さんの作った器も、朗らかに笑っているように感じられます。

私も私らしく、楽しく手を動かしたい。圧倒的に経験不足ではあるけれど…まずは手を動かすこと、そして勉強かな。焦らず、コツコツと作業を積み重ねていこうと思います。

よろしくお願いします。

修理するということ

先日、プロフェッショナル〜仕事の流儀〜に、三重県のとある電気屋さんが紹介されていました。今井さんという方で、どんな電気機器も直してしまうと評判とのことでした。

自宅にいる時は普段ほとんどテレビをつけないのですが、その日はたまたま実家に帰っていました。息子を寝かしつけたあと、なんとなく母と見ていたのですが、その仕事ぶり、一つ一つのモノを大事に子供のように可愛がる様子に引き込まれ、すごく感銘を受けました。

その方は当初、家電販売の仕事をしていたそうですが、お客様から家電が故障したから直して欲しいと依頼を受けたとき、上司から「直るものも“直らない”と言うように」と指示されたのだそうです。新しい製品が売れなくなるからです。家電製品はある時から、使ってもらうことよりも、いかに売るかが目的になったのです。

そのことで心が痛み、販売店を辞めて自分で修理屋さんを始めたのだそう。最初は相手にされな買ったけれど、今や製造元のメーカーでも直せないお手上げなものまで直してしまうほどになり、各方面から頼りにされているのだそうです。

私たちはいつの時代からか、家電に限らず、消費するように仕向けられています。どんどん目新しいものを作って店に並べて魅力的に見せて価格は下げて、まだ使えるものでも手放させ次のものを買うように、誘導されているのです。

私はそこにずっと、大きな違和感と疑問と気持ち悪さを感じていました。

このホームページを立ち上げるには戸惑いもありました。まだ技術が追いついてないんじゃないか?私のような職人の足元にも及ばないようなヒヨコが堂々と『金継ぎ』などと言っていいのか?とか。

でも、この電気屋今井さんのひたむきな姿を見て勇気づけられました。最初は誰しも未熟なんです。でも何年も何十年も正直に続けていけば、何か見えてくるのではないか?

派手なことはできませんが、ここをまず第一歩目の土台として、コツコツ頑張っていきたいと思った、修理屋さんのお話です。

人の手センサーの敏感さ

この前くっつけた器です。

写真で見ると、ズレもなく上手いことくっついたように見えるのですが、手で触ると鋭角な部分を感じて、少し引っかかります。

もうそこは、ミリ単位とかの話ではないですよね。こういう時、人の手の感覚の鋭さ、敏感さにハッとします。

伝統工芸の世界では、この微かな感触とか手触りとかを頼りに素晴らしいお仕事されている方がとてもとても多くて、本当に頭が上がりません。職人さんたちの仕事ぶり、尊敬に値します。

私は職人ではありませんが、せめて日々の生活に必要とされているモノたちが、壊れたり汚れたりして無碍に捨てられることがないように、モノを大事にするために、技術を磨きたいと思っています。

まるでお料理

欠けたお皿を直す時、よく使うのがこちら。

はい、白玉粉でございます。

これを水で溶いて、弱火にかけてコトコト音がしてきたら、一気に練り上げてお餅を作ります。あ、でもお餅を作ることが目的ではなく、お餅状になった白いネバネバを糊として使うのが目的です。

お餅状の米糊ができたら、漆と混ぜます。練り練りしてきてダマがなくなったら、糊漆の完成です。そこにコクソと呼ばれる綿の小さな繊維を混ぜたり、木粉や砥の粉など混ぜたりしてさらに練り上げたら、器の欠けを補修するのに用います。糊は炊けている真っ白なご飯があれば、それを練ってもいいですし、小麦粉でもいいのです。※外のサイトなど見ると、小麦粉がやっぱり最強みたいです。

糊漆を作る過程は、まるで料理のよう。食べられるものがそのまま材料になるのだから、面白いです。漆はもちろんそのまま食べたら大変なことになるけれど…、乾けば無害。樹木から頂いた天然の塗料と、農作物である穀物の力で、器をくっつけていきます。

本漆のこと

金継ぎが何年か前からブームのようになり、初めての方でも、難しい知識なしに始められるキットが東急ハンズなどでも手に入るようになりました。私はそういった品物を使ったことがないのですが、どうやら手に取りやすいキットのなかには本漆ではなく、石油を原料とした合成漆を使用しているものも少なくないようです。

手軽に始められるし、安価だし、なによりかぶれの心配がありません。入り口としてはとてもいいと思うのですが、石油由来なので食器への使用は、色々と心配が残ります。

その点、やはり天然素材の漆は安心です。

私が使用している本漆は、師匠の藤原啓介さんからすすめられた播与漆行さんのもの。漆はとても伸びがいい塗料(?)なので、私のように細々と作業している程度だと、この一本がしばらくもちます。

注意書きには、冷暗所または冷蔵庫で保管して下さい。と、あります。漆は生きています。夏場は特に、酵素の働きが活発になるため暑いところに放置しておくと発酵がすすみ、腐ったり、漆チューブが爆発することがあるとかないとか。

腐るのも嫌ですが、爆発したら怖すぎるので、私の漆の定位置は、我が家の冷蔵庫のすみっこです。なかなかシュールな画ですね。

かぶれの心配もあるし、保管の心配もあるし、水彩絵の具のようにサッと出してパッと塗って…というわけにはいきません。それなりに扱いにくいので、やっぱり最初は合成漆のほうがいいのかも?^^;

でも漆が、扱いにくいのは、漆が生きている塗料だからです。

漆が面白いのも、生きている塗料だからかもしれません。

棄ててしまう前に・・・

この夏にお直しさせて頂いたお椀から、色んなことを学びました。よく使い込まれた拭き漆のお椀です。

私の手元に来たときは、もう塗装がおちて肌がカサカサしていて、器の内側の底面には油じみがありました。そして亀裂が一か所。器の胴体の腰あたりまで深く入っていました。これで毎日のようにお味噌汁を入れたのかな。たくさん使ってもらって、たくさん働いたことが、その様子を見ているだけでも伝わってきました。

このお椀の場合は、傷みも大きかったので、拭き漆の上塗りではなく、一度すべて研磨して表面に残っている塗装をすべて落とし木地の状態に戻してから、もう一度最初から塗り直すことになりました。

そして、大きな亀裂は綿布を当ててその上から漆を塗りこむ「布着せ」という手法で補強しました。こうしておけば、これ以上ヒビが大きくなることもないですし、デザイン的にもアクセントになって渋かわいいです。

実は布着せ初挑戦だったのでドキドキしましたが…。拭き漆も塗りあがってみると、来た時とは比べ物にならないくらいしっとり肌に生まれ変わり、本来の美しさを取り戻しました。また一つ勉強になりました。ありがとうございます。

作業日誌と題し

日々の作業のこと、私の机の上で起こる色々をご紹介します。

金継ぎ工房と言っても、実は子育ての合間にチマチマと行っていることなので細々としたものです。勉強することも沢山あります。まだ未熟な部分も多々あるでしょう。ですが、私にも何かできることがあるんじゃないか?と思ったのが、立ち上げるきっかけです。

地球環境の危機が声高に叫ばれながらも、モノを消費するスピードは一向に緩やかになる気配がありません。安価な素材で大量に作られたものが、右から左へ、大量に消費されて、マイクロプラスチック問題などを引き起こしています。もう消費するだけの暮らしはやめにしませんか。

私たち日本人の心にあったであろう「もったいない」の精神はどこへいったのでしょう?モノを粗末に扱っていませんか?

丁寧に作られた物には心が宿ります。大切にされた物にも心が宿ります。だから壊れてしまった時に、捨てるのが惜しくなります。悲しくなりますね。そういう時は諦めないで欲しいと思います。

金継で直せるものがあります。使い続けるための知恵があります。日本にはすばらしい伝統があるのです。

私でお役に立てることがあれば、割れたお椀を手に、ご相談へおいで下さい。

修理は基本的に本漆を用いて行っております(合成樹脂は使用していません)

仕上げについては、金・銀・真鍮と色漆などに対応しております。ご依頼される方の

意向を伺い、その都度、相談のうえで決めていきたいと考えております。

<ご依頼までの流れ>

まずはじめに画像などで破損の状態を拝見し、仮見積もりをさせて頂きます。その後

修理品を直接お持ちいただくか郵送して頂き、見積額を決定、修理となります。

<修理・メンテナンスできないもの>

当工房では、ガラス製品についてはお断りさせて頂いています。技術が追いついたら

お受けできるようになるかも知れません。その他、器の状況によりお断りする場合も

ございますことをご了承ください。