年が明けてから、いくつかご新規の器をお預かりさせて頂いたのですが、その際に本漆と新漆のお話になりましたので少しご紹介したいと思います。

私が習い始めた頃に比べると金継ぎ師の方もだいぶ増えましたが、近くでやってくれるところを…と検索して当工房へ持ち込みをして下さる方が多く、とてもありがたいです。団地の一室でひっそりと開いている工房ですので、そんなに沢山はできませんが、マイペースにやらせて頂いております。

私が金継ぎに使用しているのは、基本的に「本漆」です。漆の木から頂いた、とても貴重な樹液です。元々、樹の汁ですので、自然なもの、環境にやさしそう、土に還りそうなものになります。実際はその堅牢さゆえ、2000年前に塗られた漆の塗膜が発掘されたりするそうで、意外と土に還らないのかも?と思ったりもしますが…。製造過程で科学的な処理はほとんど行いませんし、サステナブルな感じがしますね。

一方で、最近とても増えているのが、「新漆」を使った金継ぎです。こちらは化学的に合成された塗料で、漆のようにかぶれることがないため、扱いが簡単というのが一番の特徴です。ただ「新漆」の、特に色漆は安全性がハテナ?です。「顔料に有害な物質を含む」と、はっきり製品ホームページにも書かれているので、食器への使用は注意が必要となります。

「本漆」「新漆」、どちらが優れているとかはありません。それぞれに長所と短所があります。どちらを使用しても、同じような仕上がりになるので、あとは考え方次第というところでしょうか。

私は昔から、環境への関心が高く、なるべく自然と調和する方法を考えてきたような人間なので、なるべく自然に近いものを使いたいということで、本漆を使わせて頂いています。

細々とやらせて頂いているお教室でも、本漆を用います。(その際には、しっかりかぶれ対策を行います)

修理をどこに頼もうか、迷ってらっしゃる場合の何かご参考になれば幸いです。