休止します。

予告の通り、金継ぎ修理は8月いっぱいで受付を休止させて頂きました。現在お預かりしております器は10月末までにお手元にお返しいたします。

再開は産後の体力と気力の回復具合によりますが、2024年11月以降を考えております。お直ししたい器をお持ちの方にはご不便をおかけしますが、ご理解のほど、どうぞ宜しくお願いいたします。

尚、当工房の休止期間中にどうしても直したい器がある場合には、信用できる金継ぎ師を紹介致しますので、フォームからお問合せ下さいませ。

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自宅の一角に小さな工房を立ち上げて3年と少しの期間でしたが、色んな経路でこの工房を見つけてくださる方がいらして、多様な器を持ち込んでくださるので、おかげさまで多くの経験を積むことができました。本当にありがたい事です。

金継ぎを通してたくさんのご縁も繋がりましたし、私自身の見識も広がりました。興味を持ってお声かけ頂いた皆様に感謝したいです。

今後は体調と家族を優先した生活に切り替え、一年と少しお休みを頂きますが、この先もご期待に応えられるよう、お休み中もできる範囲で勉強を続けて再開に備えたいと思っています。

来年以降でまた器の困りごとがありましたら、その時にはぜひ頼って頂けると嬉しいです。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

漆かぶれのこと

季節は梅雨。温度も湿度もよろしく、漆が活性化しています。


私はというと、久しぶりにかぶれています。
心当たりは色々とあります。
ひとつ強く言えるのは、作業中は整理整頓が大切ということです。

今年3月から細々と金継ぎ教室をするようになりましたが、お教室の最初では、かぶれについて時間をかけてご説明させて頂いてます。

と言うのも、以前、漆教室のアシスタントをさせて頂いていた時、色んな方の、色んな症状を目の当たりにしたことがあり、甘く見てはいけないと感じたのです。

私は本漆を使用するようになって10年程ですが
いまだに一年に1〜2回はかぶれ症状が出ている気がします。

「かぶれる」とは聞くけど、実際はどうなのか?というところまでは、金継ぎキットの説明書や関連本にはあまり具体的に書いていないと思います。

今日はいい機会ですので、私の症状について少し書かせて頂こうと思います。

お見苦しいかも知れませんが、最後のほうに今の両手の写真も載せておきますね。

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私の場合、まず手指に小さな水泡がプツプツできます。
これが痒いです。
時間は特に決まっていませんが、「あっ痒いな」と思う瞬間が1日に何度かあります。
寝てる時に痒くて起きることもあります。

で、痒いと掻きますね。
すると熱を持ち患部は赤くなり、水疱は若干広がります。
掻き壊すと傷になるので厄介です。

この痒い波が去ると、赤みは引いて水疱も消え、
何事も無かったように普通の肌に戻ってます。
ただその間も肌の奥で痒みのタネのようなものが
ジワジワと燻っているのは感じています。

も少し酷いときは全身どこかしらにある
ゴムの痕とかが痒くなる時もあります。
下着のゴム、靴下のゴム、ウエストのゴムのあと
それらが意味もなく痒くなったりします。

あとは肘の内側、膝の裏側など皮膚の薄いところ
じんわり汗をかくと痒みを感じたりします。

痒みに対して軟膏などを塗る時もありますが
ほとんど気休めです。

漆かぶれはアレルギー症状の一つ。
漆が付着した部分だけが発症するのではなく
場合によっては全身症状となります。

身体の中から湧き上がってくるような感覚があるので
例え皮膚の表面に何か塗ったとて、
それが抜群に効くとは思えません。

対処法としては、冷やすのが一番だと思います。

私の場合、症状は長くて2週間。
今回は多分1週間くらいで落ち着く気がします。

この10年で多少は耐性がついたのか
普段は皮膚についてしまっても
すぐに拭いておけばかぶれたりしないのですが
その時の体調と季節と漆の活性具合により
かぶれる時はかぶれます。

大抵は今のような梅雨の時期にかぶれています。
漆がモーレツ元気になっている季節。

それと汗をかく季節なので毛穴が開いて、
アレルギー物質が皮膚から侵入しやすいとか
単純に半袖で作業して露出が増えているからとか
整理整頓を怠っているからとか暑くて手袋しないとか
心当たりはありまくるので、かぶれないためには
基本の対策が大事ということでしょう。

中にはこの程度で済まない人もいます。
皮膚科に駆け込む方も見てきました。

金継ぎが流行って久しいですが
手軽に買える金継ぎキットの中に「かぶれることがあります」の一文を添えるだけで、本漆が入っているものも存在しているようで、不安を感じることがあります。扱いが軽いというか…。

天然の漆は素晴らしいものですが、そもそもは漆の樹からいただいた、貴重な樹液です。

ご自身でやってみたいと考える方は、保管方法、かぶれ対策、漆の良い部分だけでなく
扱いを間違うと大変なことになりかねない、天然漆ならではの危うさも、正しく知って欲しいと思います。

私のかぶれの話は、何かの参考にして頂けるなら幸いです。

過去に見てきた方の症例?についても、また機会があれば改めて書きたいと思います。

消費について考える

20代の頃は、ゼロから1を産み出したいと思っていました。なにか自由に、出来そうな気がしていたんです。若気の至りでしょうかね。

“オリジナル”に躍起になって、紙雑貨を作ってクラフト市に出店している時代もありました。

でも自由って、ある面で不自由なんです。自分の中の価値観とかこだわりが邪魔してきたり、人の目が気になったり。それに対して、自由なんだから良いじゃないかと、反抗してみたり、傷ついてみたり。

その一つひとつが経験になっていますが、私にはとてもしんどかったです。

それに、本当のオリジナルがこの世にどれだけあるのか?を考えた時、ちっぽけな脳みその自分にできることなんて、とても限られている、たかが知れている、ということに気付きました。

そのちっぽけさに気づいてから耐えられなかったのが、こんな自分のために、美しく作られたまっさらな白い紙が、汚れていくことでした。

私が押すボタン一つで、プリンターに印刷され、折り目をつけられて、“商品”にされて売られて消費されていくのです。いや、今思えば消費は、私が印刷にかけたところで始まっていたのかも。それかもっと前、ボタンを押すところから?それとも私の手に入る前、製造されている段階から、消費なのかもしれない。白い紙にされるためにどこかで樹木が消費されているのですから。

私の手によって、白い紙から“商品”に生まれ変わったように見えるソレは、売れようが売れまいが、私が用意した商品棚に並んだ時点で、すでに消費されている。なんだかその状態が申し訳なく、後ろめたくもありながら、他に手段を知らなかった当時の私は、違和感を持ちながらもただ闇雲に、消費を繰り返していました。

転機は出産。それまで迷いながらやっていた創作も模索も、突然現れた新生物によって強制終了されました。

育児は消費の一方。子供のものはどんどん増え、そしてどんどん消費されていく。もったいないなんて言っている場合ではない。立ち止まる暇も考える隙もない毎日。

ようやく自分の時間が戻ってきたのは、息子がプレ幼稚園に行くようになってからでした。まず手はじめに、育児で放ったらかしにしていた自宅の器を直しました。カサカサだった漆器はみずみずしい色艶を取り戻し、欠けまくっていた器はおかずをのせると食卓で活き活きとして見えました。

あ、もう今までやっていたような消費はやめよう。と思った瞬間でした。

金継ぎは消費というより、むしろ、再生。壊れた器が消費されてしまうのを止めることができます。

壊れたらゴミ箱へ、という流れを変えられるんです。壊れたら直せばいい。

それに、ウンウン頭を抱えてゼロから1を産み出そうと無駄に悩む必要もありません。

器は大切に使えば、長く使える優れた道具です。我が家には、江戸時代に作られた器もあります。

数百円でさまざまなモノが買える時代ですが、私は原価の崩壊した安売りの棚に大切なものは並んでいないと思っています。その証拠に、消費している人々はどこか心がカサカサして、無いものねだりしているように見えます。高いものがいいとも限らない。個性的なデザイン、希少性、プレミア感、あるはずのない「特別」を探し回っても暮らしの役に立つのは一握り。正直、私にとっては全てどうでもいいことです。

それよりも暮らしを支えてくれる、力強い一つ一つの道具、そこに宿る気持ちや、残っている思いを大切にしたいと思っています。

モノを消費する、という、当たり前の流れ。人によっては何も疑問も持たず終わることでしょうけれど、どうも私は、見て見ぬふりをできないようです。

新年のご挨拶

今頃になってしまいましたが、今年もコツコツやっていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

2020年は世界的にも本当に大変な年で、自分のこと、家族のこと、色々と考えさせられました。おかげさまで、金継ぎのほうは、少量ずつながらもほぼ途切れることなくお声かけをいただいて、ありがたくお仕事させてもらっています。

一方でやってみて分かったことも沢山あります。さまざまなお品物が手元に届きますが、そのひとつひとつの器が、私に学びをもたらしてくれます。

ホームページも、まだ開設して一年足らず。まだまだ駆け出しですが、器を預けて下さる方への感謝を忘れずに、今年も変わらず丁寧に器と向き合いたいです。

去年仕上げた器を、近いうちにホームページの作品ページに追加する予定です。

更新頻度ゆるゆるなのは、多分今年も変わりませんが、たまに覗いていただけると嬉しいです。一応、一番更新が頻繁なのはインスタグラムです。アカウントをお持ちの方は、こちらもよろしくお願いします。

アカウント名 botanical_art_kusamura で調べていただけると出てくると思います。

修理は基本的に本漆を用いて行っております(合成樹脂は使用していません)

仕上げについては、金・銀・真鍮と色漆などに対応しております。ご依頼される方の

意向を伺い、その都度、相談のうえで決めていきたいと考えております。

<ご依頼までの流れ>

まずはじめに画像などで破損の状態を拝見し、仮見積もりをさせて頂きます。その後

修理品を直接お持ちいただくか郵送して頂き、見積額を決定、修理となります。

<修理・メンテナンスできないもの>

当工房では、ガラス製品についてはお断りさせて頂いています。技術が追いついたら

お受けできるようになるかも知れません。その他、器の状況によりお断りする場合も

ございますことをご了承ください。