工房グッズつくりました。

息子氏の通う幼稚園、コロナのあれこれで予定より10日間夏休みが長引きました。加えて預かり保育も当面のあいだ自粛して下さいとのお達しが届いたため、結局1ヶ月以上、漆作業ができないでいます。

修理をお待たせしている方にはお時間頂戴して申し訳ないのですが、9月半ばの通常登園が始まってから、しっかり器と向き合おうと思っています。

今のところ、まだ子育てが生活の軸なので、ブレーキとアクセルを踏み分けながら、急がず焦らず、作業を重ねていくスタイルです。ご理解いただけましたら幸いです。

それにしても、このようなご時世の中、預かっていただけるだけでも感謝です。教育現場の方々もお疲れ様です。

さて、夏休みの間、漆仕事が全くできないストレスを発散?するために、SUZURIというサイトで、自分の欲しいグッズを作ってみました。

時には息子を隣に座らせて、PC画面の左半分で動画を見せながら、右半分(せま〜い画面)でポチポチ作業。

動画を見せながらのグラフィック作業は、10年以上も愛用しているPCにとって荷が重いのか?度々フリーズを繰り返しながら…なんとか完成しました。

冷えやすい体質のため、昔からハンカチとかスカーフとか首に巻いて暖をとる布が好きでした。なのでまず手始めに、バンダナを作ってみました。

こちらのモチーフは、ピンクポーセリンという、チェコの陶器製一輪挿し。割れてしまったものを知人から譲り受け、ただいま修理待ちです↓

瞬間接着剤でカケラをくっつけたらしいのですが、これは鍋で煮て分解してから、再び漆で接着します。(ちなみに隣のカエルも作家さんによる陶器製、可愛いです)

煮る作業、こんな感じ↓

お湯でゆっくり煮ます。コトコトと弱火で。

無理に取ろうとしないのがポイント。色んな方向から楊枝などで力を加えてみて、どこが動くのか探りながらテコの原理でクイッとやると、簡単に外れる場所があったりします。

で、無事取れたのでこれから金継ぎしていきます。


こんな柄もあります。こちらはポーリッシュポタリーという、ポーランド陶器がモチーフ。コロンとしたフォルムがかわいいのです。

オリジナルグッズということで、小さく「金継ぎ工房くさむら」と、名前を入れさせてもらいました。これから少しずつ、器のデザインで数を増やしていこうと思います。

自分の描いた線が雑貨になるのは単純に嬉しいですね…。受注生産という形でどなたでも購入できますので、よかったら覗いてみて下さい。リンクを貼っておきます。

SUZURI リンク↓

うつわとくさむら ( botanical_kusamura )の

オリジナルアイテム通販 ∞ SUZURI(スズリ)

https://suzuri.jp/botanical_kusamura

サイト内で
ショップ名「うつわとくさむら」
または「botanical_kusamura」
で検索すると出てくると思います。

モノの価値観のこと

息子が1月末から体調を崩し、咳を伴いながら6日間くらい38〜39度の熱を出し続けていました。罹患している当人が大変なのは言うまでもありませんが、今回は長引く熱と咳で、看るほうも最後はさすがに疲れてしまいました。コロナのこともあり、気が気ではありません。これは普通の風邪なのか?それとも…、という不安が常にありました。ともかく今は元気になったのでホッとしています。

昔の整体師・野口晴哉さんの「風邪の効用」という本には、確か、大人も子どもも時には上手に風邪をひくことも必要だと書いてあったと記憶しています。意味があって風邪をひいていると思えば、風邪も悪いことばかりではないと心に受け止める余裕ができます。きっと息子は今回の風邪でまた一つ、強くなったのだろうと思います。

さて、問題は元気になってからです。今まで熱で思うように遊べなかった分、回復してからヤンチャが爆発。私が大事にしたいと思っているモノ、いつもなら触らないようなモノにまで手を伸ばして、自分の遊びに取り入れようとしていました。

そして小さな事件が起きました。私のお気に入りのアンティークの椅子に、何故か楊枝を突き刺して、座面に複数の穴を開けたのです。それまでの1週間の看病疲れと、想像もしなかった出来事を前に、完全に心が折れた瞬間でした。

私は器を直す仕事をしているくらいなので、基本的に自分の持ち物に対しても大事にしたいという意識が流れています。作家さんの器、骨董の器、昭和の引き出し、レトロな生地などなど。。。

そしてモノは使ってこそ価値があるという考えなので、わが家にあるモノ達にはきちんと働いてもらっています。子どもにもそのうち伝わればいいなと思いながら、日常使いしていました。

しかし…しかし、難しいものです。

この世に生まれて4年程度の人間にとって、「大事」な感覚というのは極めて限定的です。自分の持ち物に対してはコレが大事、という思いはある様子なのですが、自分以外の誰かが大事にしていることを想像するのは容易ではないようで、いとも容易く私の持ち物を破ったり汚したりしてくれます。

彼にどれだけのお気に入りを壊されてきたかを思い返すと、子どもって残酷だなぁとすら感じます。子どもにとっては、100円のお皿も、10000円のお皿も、値段は関係なく“お皿”でしかないのです。価値観を学び始めたばかりの年齢だけに無理はないのですが、彼の行動によって破壊されたモノ(と、私の心)を思うと、時に虚しさすら感じてしまいます。

モノを大事にしたいという思いで器を直し、古いものを使い継いでいる…一方で、子育ては消費するばかり、破壊の連続。私のやっていることは意味があるのだろうか?と。

だからといって、食卓にプラスチックの子供用食器を並べるのは違うと思っているので、相変わらず陶器や漆器を並べ続けるのですが。

モノの寿命、モノの価値って不思議です。

この仕事をするようになって、本当にこのテーマについて、よく考えるようになりました。誰かにとっては大きな意味のある器でも、また違う誰かにとってはゴミ同然だったりします。値段では決められない不思議な世界の中で、私はただ器を直すのです。

何年も続けていれば、子どもにも伝わるでしょうか。伝わってほしいと願いながら、また机に向かいます。

ガラスの欠け

当工房では、基本的にガラス製品の修理は承っておりません。

漆はツルツルした面に定着しにくく、その時にくっついたように見えても、乾燥時の収縮などもあって剥がれやすいので、なかなか修理するのが難しいのです。
というわけでガラスの器のお直しは現状全て、お断りさせて頂いているのですが、これは自宅の器なので実験的に修理をしてみました。


ガラスは補修した裏側から下地に使った漆の色が透けてしまいます。これも難しい理由の一つです。

見る角度によって、下地が見えたり隠れたりするので、器の印象そのものが変わります。

今回は小さな欠けでしたが、コツンと何か当てたらポロっとすぐに取れてしまいそうだったので、実際の傷よりも広めに漆で覆い金消し粉で仕上げました。


強度はいかほどなのか?実際に使ってみながら、経過観察していきたいと思います。
ガラス用漆というものも一応販売されているのですが…その定着の度合い、経年変化の具合なども分からないので、まだ手が出せないでいます。

ガラスの修理、難しいです。

経年変化のこと

 私はパソコンに向かうのが苦手なので、ちょっと気を抜くとすぐにブログの更新が止まってしまいます。季節が変わってしまいました。元気に暮らしています。コロナ渦による混乱も一時期に比べると少しは落ち着いてきたように見えますが、当工房は“工房”と呼んでいるとはいえ、団地の一角にある小さな部屋ですので、今後も配送でのやり取りをベースにさせて頂きたいと考えています。

 ホームページで「横浜」と書いているからか、ありがたいことに、ご相談いただくお客様の8割は横浜在住の方です。近くにお住まいであるならば、私の気持ちとしては我が家のリビングにお招きして、実際に修理したものを手に取って頂き、金継ぎしたカップで一緒にティータイムをしたいところなのですが、今はまだその余裕がないのが現状です(まず部屋の片づけをしないとですしね…)。

 いつかは金継ぎカフェ、実現したいと思っています。が、いつになるやら(?)。

金継ぎしたカップと言えば、ひとつ、いい味になってきた継ぎ痕をご紹介します。

まず直す前の破損状態はこちら↓

直し終えたのが去年の今頃です↓

銀粉を蒔いて、銀継ぎ仕上げとしました。直したては美しい銀の白っぽい色が映えていましたが、この色艶は経年変化で鈍くなります。それも見越して、銀にしました。というか私は経年変化するのが逆に好きで、自宅の器は金よりも銀や真鍮で仕上げることのほうが多いです。特に渋い色の器には好んで経年変化する金属を使用します。

一年使用して、良い感じに変化した現在がこちら↓

グッと渋く、器に馴染みましたね。

この経年変化を良しとするのかどうか、人によって分かれるところかと思いますが、私は個人的に変化の色合いがとても好きです。使われる頻度や、器が置かれている環境で変化のスピードは異なると思いますが、直したての頃の輝きは、何年も使っていると霞みがかかったようになるのが普通です。でも、その変化した姿こそ愛して欲しいと思います。

作られた時の状態でずっとピカピカしているものは、この世にはほとんどありません。モノは使われてこそ価値を増します。私はご依頼して下さった方が、お気に入りを再び使い続けることができるようにお直しをさせてもらっています。直す前よりも少し扱いに注意が必要かもしれませんが、せっかく直ったのだからと食器棚に飾っておくのではなく、惜しみなく使ってあげて欲しいと思います。

あそびのデザイン

冬に直した自宅用のオーバル皿ですが、ひびが入っていた部分を直すだけではなく、少し模様を足してみました。

元々のお皿のデザインを汲んで、あそびで描いてみたのですが、お料理などを入れてもアクセントになるので、これがなかなか楽しいです。

自宅用のお皿は実験台でもあるので、ご依頼頂いたお預かりの器ではやらないことにも挑戦しながら、暮らしの中で使い続けています。

外側もこんな感じ。

金消し粉を使用。

ちなみに加飾をする前は、ただ漆でヒビを繕っただけの状態ですかっていましたので、こんな感じでした↓

スッと漆の線が入っているだけ。だいぶ印象が変わりますね。

お直しをご依頼いただいた場合、仕上げは基本的に、金粉・銀粉・真鍮粉(いずれも消し粉というマットな仕上がりの金属粉です)の加飾仕上げからお選びいただくようにしているのですが、器のデザインによっては加飾しないほうがクールに仕上がるお品もありますし、大げさなことをしなくても直るお品もありますので、一様に「金継ぎ(金繕い)」を勧めるのもどうなのかな~?と思うことがあります。金継ぎが流行って、もてはやされるようになって久しいですが、「金」は飾りにすぎません。

金属粉による加飾は、酸化して色が変わったり(その変化も一興なのですが)、何度も何度も洗ううちにどうしても剝れてしまったりします。

超ハードに日常使いする器ならば特に、金属加飾が取れてしまってがっかりするよりも、最初から色漆仕上げのほうが良いのではないかな?とも思ったり…。

いずれにしても器と対話しながら、お客様とも相談しながら、進めたいと考えています。

今回のようなあそびのデザインを入れて欲しいという場合にも対応しますので、ご相談下さい。

面白く、愉しく

今年も謙虚に素直に器と向き合い、学ばせてもらいたいと思います。よろしくお願いします。なにより去年踏み出せたホームページの第一歩、大事に育てていきたいです。

年末のバタバタで、金継ぎの作業が一ヶ月以上滞っていました。連休明けからまた再開できそうなので楽しみです。

写真は年末(と言っても11月)に伺わせて頂いた、私の漆と金継ぎの師匠・藤原啓祐さんの個展で購入してきた品物です。オヤツにピッタリ。かわいい。食事の際、漬物など添えるのもいいでしょうね。

一人で金継ぎしていると、モノの命のこととか消費社会の現在とかを色々と、考えてしまって、悶々としてしまうことがあります。そのことを少しの時間でしたがシショー藤原さんに聞いてもらえて、フッと肩の力が抜けました。

あらゆるモノを直してあげたい…というか直してあげるべきなのでは?!と暴走気味の妄想をする私に

「あらゆるモノと言っても、全部は無理やで」と笑って諭してくださったこと、忘れません。藤原さんでも直せないものがあるということです。そっかー、そりゃそうだー、と気が抜けました。

モノは完成した時、ピークの輝きを放ちます。そこからは下り坂。時の経過に人間誰しも抗えないのと同じく、モノも使われて傷つきながら最後は土に還ってゆくのが自然の流れ。なにもかもを、永くこの世につなぎ止めようとしなくてもいいのだと思いました。

藤原さんは、とても楽しそうに仕事をします。木彫りの時も、漆の時も、教室だと特にお喋りがとまらない愉快な方です。だから藤原さんの作った器も、朗らかに笑っているように感じられます。

私も私らしく、楽しく手を動かしたい。圧倒的に経験不足ではあるけれど…まずは手を動かすこと、そして勉強かな。焦らず、コツコツと作業を積み重ねていこうと思います。

よろしくお願いします。

修理は基本的に本漆を用いて行っております(合成樹脂は使用していません)

仕上げについては、金・銀・真鍮と色漆などに対応しております。ご依頼される方の

意向を伺い、その都度、相談のうえで決めていきたいと考えております。

<ご依頼までの流れ>

まずはじめに画像などで破損の状態を拝見し、仮見積もりをさせて頂きます。その後

修理品を直接お持ちいただくか郵送して頂き、見積額を決定、修理となります。

<修理・メンテナンスできないもの>

当工房では、ガラス製品についてはお断りさせて頂いています。技術が追いついたら

お受けできるようになるかも知れません。その他、器の状況によりお断りする場合も

ございますことをご了承ください。