棄ててしまう前に・・・

この夏にお直しさせて頂いたお椀から、色んなことを学びました。よく使い込まれた拭き漆のお椀です。

私の手元に来たときは、もう塗装がおちて肌がカサカサしていて、器の内側の底面には油じみがありました。そして亀裂が一か所。器の胴体の腰あたりまで深く入っていました。これで毎日のようにお味噌汁を入れたのかな。たくさん使ってもらって、たくさん働いたことが、その様子を見ているだけでも伝わってきました。

このお椀の場合は、傷みも大きかったので、拭き漆の上塗りではなく、一度すべて研磨して表面に残っている塗装をすべて落とし木地の状態に戻してから、もう一度最初から塗り直すことになりました。

そして、大きな亀裂は綿布を当ててその上から漆を塗りこむ「布着せ」という手法で補強しました。こうしておけば、これ以上ヒビが大きくなることもないですし、デザイン的にもアクセントになって渋かわいいです。

実は布着せ初挑戦だったのでドキドキしましたが…。拭き漆も塗りあがってみると、来た時とは比べ物にならないくらいしっとり肌に生まれ変わり、本来の美しさを取り戻しました。また一つ勉強になりました。ありがとうございます。

作業日誌と題し

日々の作業のこと、私の机の上で起こる色々をご紹介します。

金継ぎ工房と言っても、実は子育ての合間にチマチマと行っていることなので細々としたものです。勉強することも沢山あります。まだ未熟な部分も多々あるでしょう。ですが、私にも何かできることがあるんじゃないか?と思ったのが、立ち上げるきっかけです。

地球環境の危機が声高に叫ばれながらも、モノを消費するスピードは一向に緩やかになる気配がありません。安価な素材で大量に作られたものが、右から左へ、大量に消費されて、マイクロプラスチック問題などを引き起こしています。もう消費するだけの暮らしはやめにしませんか。

私たち日本人の心にあったであろう「もったいない」の精神はどこへいったのでしょう?モノを粗末に扱っていませんか?

丁寧に作られた物には心が宿ります。大切にされた物にも心が宿ります。だから壊れてしまった時に、捨てるのが惜しくなります。悲しくなりますね。そういう時は諦めないで欲しいと思います。

金継で直せるものがあります。使い続けるための知恵があります。日本にはすばらしい伝統があるのです。

私でお役に立てることがあれば、割れたお椀を手に、ご相談へおいで下さい。

修理は基本的に本漆を用いて行っております(合成樹脂は使用していません)

仕上げについては、金・銀・真鍮と色漆などに対応しております。ご依頼される方の

意向を伺い、その都度、相談のうえで決めていきたいと考えております。

<ご依頼までの流れ>

まずはじめに画像などで破損の状態を拝見し、仮見積もりをさせて頂きます。その後

修理品を直接お持ちいただくか郵送して頂き、見積額を決定、修理となります。

<修理・メンテナンスできないもの>

当工房では、ガラス製品についてはお断りさせて頂いています。技術が追いついたら

お受けできるようになるかも知れません。その他、器の状況によりお断りする場合も

ございますことをご了承ください。