平皿のふち、マグカップの取手

引越し、グループ展とあり、しばらく金継ぎをお休みさせて頂いていましたが、この秋にお直しさせて頂いた器を少しご紹介します。

ひとつは平皿の割れ。何かに当ててしまったのか、縁のところが割れていました。ですがご依頼主様が接着剤で直していて、受け取った時はしっかりとついた状態でした。
接着剤で補修済みの場合、一度はお湯でコトコトお皿ごと煮てみます。接着剤が取り除ければカケラに戻して漆で接着し直すのですが、今回はかなり強力な接着剤でついている様子で、ビクともしませんでしたので、そのまま上から漆を重ねて凹凸をなくし、金丸粉で仕上げました。

接着剤は日々進化しているので、今はかなり強力なものもあります。
私も自宅のお皿の何枚かで実験していますが、漆で仕上げたものは食洗機に何度も入れていると熱と湿気のダブルパンチで浮き上がって剥がれてきてしまうのに対し、接着剤をこねて簡易金継ぎしたものは何度食洗機にかけても今のところ剥がれていません。
安全性で言うと「?」ですが、毎日のように使う、子どもが使う、食事の後片付けが忙しい、という方にはまぁ良いのかなと考えています。

ただ、やはりおすすめしたいのは、漆による継ぎです。自然のものは優しい、だから脆い面もあるのですが、それを分かった上で使い分けて頂けると良いかと思います。

補修のもう一つは、マグカップの取手の割れです。取手のところって割りがちですよね…。私自身も1つ粉砕したことがあります。ちょっと落としただけでも、華奢にできている取手が犠牲になってしまうことがあります。


麻糸を巻いたり和紙を巻いたりして、補強する場合もありますが、土物の場合はかなりガッチリ噛み合うので、継いだまま補強なしで仕上げることもよくあります。


こちらは真鍮仕上げ。使うほどに酸化が進み、鈍色に変化していく楽しみがあります。器の土色によっては馴染みすぎて、直したことを忘れるくらいの色に変身してくれる時もあります。

器を持ってきて下さる場合や、お任せでご依頼頂ける場合には、必ずしも金による仕上げ=金継ぎではなく、器に合わせたご提案をさせて頂きますので、お気軽にご相談ください。

修理再開のお知らせ

おかげさまで、夏の間に自宅のリフォームは無事終わり、引っ越しとその後の片付けも終え、すっかり元のペースに戻っています。

ホームページの更新が遅くなってしまいましたが、金継ぎの修理受付を再開しています。
秋のあいだに色々あって、金継ぎ教室ができませんでした。教室は来年一月から再開したいと思っております。

半年間お休みをいただきありがとうございました。何かご相談ごとがあれば、お気軽にお問合せ下さい。
なお、リフォームして、以前よりも人を迎えやすくなりました。お近くにお住まいでしたらお持ち込みも可能ですので、ご検討ください。

どうぞ宜しくお願いいたします。

休止中の修理先

自宅のリフォームが始まりました。一週間でほとんどスケルトンの状態になり、寂しいというよりも、きれいさっぱり何もないので、爽快な気分です。

それにしても、何事も破壊はアッという間に行われるのに対し、新しく構築していくのは時間がかかることなんだなぁ、としみじみ思いました。
遠くの国では理不尽な暴力によって建物が壊され、文化が壊され、人々の生活が壊されているけれど、一方で私はただ暮らしやすくするためだけに破壊行為をしてもらっている。なんと平和で呑気で贅沢なのでしょう。暴力に対して暴力で返す…という最低な流れだけは避けてほしいと願うばかりです。

さて、我が家は仮住まいに引越して10日ほど経ち、なんとか生活も落ち着きを取り戻しましたが、金継ぎは8月いっぱいまで受付をお休みさせて頂きます。

その間、待てないよ〜、急ぎで直して欲しいよ〜、という器をお持ちの方は、友人で金継ぎ仲間の古末さんをご紹介させて頂きますので、ホームページのメールフォームからご相談下さい。

作業はお休みですが、くさむら工房のインスタグラムは随時投稿してまいります。「botanical_art_kusamura」で検索してみて下さい。掲載画像はお直しした器が中心ですが、リフォームのことも少しずつアップ予定です。このブログよりは頻繁に更新しています。

ご不便をおかけしますが、どうぞ宜しくお願いします。

器修理の受付を休止します

自宅(団地)のフルリフォームを行うことになりました。
フルリフォームですので、一旦引越しをして仮住まいに3ヶ月、それからもう一度引越しをしてリフォーム済みの綺麗な住まいに戻ってきます。
つまり短期間に引越しを2回します。
その間、お預かりしている大切な器たちに何かあったら嫌だなぁ…、と思うのと、リフォームの事で頭がいっぱいになってキャパオーバーになる気がしているので、器修理の受付をしばらくお休みさせて頂くことにしました。
修理をご検討して下さっていた方には大変ご不便をお掛けしますが、ご理解とご協力を頂ければ幸いです。

●受付休止期間は

4月1日〜8月30日

とさせて頂きます。

金継ぎに関するご相談だけは行っております。壊れてしまってどうしたら良いか分からない、直るかどうか聞いておきたい、という場合には、メールでお気軽にお話をお聞かせ下さい。
そして修理したい!と思ったなら、ぜひ9月以降に工房までご発送下さい。確実に作業進めさせて頂きます。

作業遅れ気味です

2月は息子の幼稚園が休園になったり学級閉鎖になったり、息子が微熱を出したり、ズル休みをしたり・・・、色々とありました結果、登園日数が7日という、大変なひと月になりました。もう春休みなのか?と思いました。

もう、こんな状態になってくると、あきらめの境地とでも言いますか。園から学級閉鎖の連絡を受けても、「はいはい~、どうぞー」という感じです。息子はここぞとばかりに遊びまくっていました。

そんなわけで2月、私は仕事をしたくてもできない、スローペースを強いられていましたので、作業は当然遅れています。うつわを預けて下さっている方の中には、まだかなーっ、と首を長くしてお気に入りの器の帰りを待っていらっしゃる方もおられると思いますが、こんなご時世ということで、ご了解いただければと思います。できる範囲でコツコツ進めていますので、お待ちください。

最近修理させて頂いた器をいくつかご紹介しておきます。

注ぎ口が欠けてしまった急須です。注ぎ口は水分を含みやすい場所なので、正直とっても難しいです。もしかしたら使っているうちに、水でふやけて取れてしまう可能性もありますので、できる限りしっかりお直しさせていただきましたが、要経過観察、という感じです。

黒漆仕上げ

次は作家ものの、個性的なマグカップ。

縁の欠けのお直し

縁に小さな欠けが何か所もできてしまい、口当たりがザラつくようになってしまったとのことでご依頼いただきました。うつわの個性を生かして遊んで欲しいとご要望頂きましたので、今回は赤漆と金粉を用いて、最初から器のデザインの一部だったようにお直ししました。こういう変化に富んだ修理は楽しいです。ご依頼主様のティータイムが今までよりいっそう豊かな時間になります様に。

最後は素敵な土もののマグカップ

白漆仕上げ

あえて色漆のみで、シンプルに仕上げました。白漆と言っても、漆は乾くとき暗い色になりたがる性質があるので、いわゆる「白」にはなりません。メーカーや乾く時間(季節)によっても少し色味が変化しますが、白というよりカフェオレ色です。ですが白い器にはよく馴染むと思います。

マグカップに白漆、という組み合わせは、個人的に結構好きです。コーヒーを飲むときやカフェオレを飲むときに、チラッと修理あとのやさしいカフェオレ色が見えると、どことなく「調和」を感じます。私だけでしょうか。

修理は金仕上げの場合、欠けが3500円から、割れは4000円程度からを目安にご案内しておりますが、漆仕上げはほかの金属粉仕上げの場合には、金仕上げから500円引いた価格でお引き受けしています(何しろ金が高いですからね…)。仕上げで迷っていらっしゃる場合は、ご相談下さい。

工房までお持ちいただければ、実際の修理品や、色漆の見本もお見せできます。横浜市内などお近くの方は、ぜひ直接のお持込もご検討ください。

2022

新年おめでとうございます。

この一年、日頃から器を大切にしている、器好きのみなさまにとって、良い年になります様に。

息子が幼稚園に入園してから開いたこの工房は、器を預けてくださったり、お教室に来てくださったり、関わってくださる方々によって少しずつ育ててもらっています。

初めて金継ぎを目にした日から、10年以上経ちますが、その時はまさか仕事にするとは思ってもいませんでした。おかげさまでコツコツ続けることができています。

年末年始にはホームページの掲載作品を追加しようと考えていたのですが、すみません、色々と間に合っていません。今のところ修理例が一番見られるのはInstagramになっています。

もしアカウントをお持ちでしたら、

「botanical_art_kusamura」

で、検索してみてください。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

昨年の金継ぎ例をいくつか掲載しておきますね↓

漆かぶれのこと

季節は梅雨。温度も湿度もよろしく、漆が活性化しています。


私はというと、久しぶりにかぶれています。
心当たりは色々とあります。
ひとつ強く言えるのは、作業中は整理整頓が大切ということです。

今年3月から細々と金継ぎ教室をするようになりましたが、お教室の最初では、かぶれについて時間をかけてご説明させて頂いてます。

と言うのも、以前、漆教室のアシスタントをさせて頂いていた時、色んな方の、色んな症状を目の当たりにしたことがあり、甘く見てはいけないと感じたのです。

私は本漆を使用するようになって10年程ですが
いまだに一年に1〜2回はかぶれ症状が出ている気がします。

「かぶれる」とは聞くけど、実際はどうなのか?というところまでは、金継ぎキットの説明書や関連本にはあまり具体的に書いていないと思います。

今日はいい機会ですので、私の症状について少し書かせて頂こうと思います。

お見苦しいかも知れませんが、最後のほうに今の両手の写真も載せておきますね。

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私の場合、まず手指に小さな水泡がプツプツできます。
これが痒いです。
時間は特に決まっていませんが、「あっ痒いな」と思う瞬間が1日に何度かあります。
寝てる時に痒くて起きることもあります。

で、痒いと掻きますね。
すると熱を持ち患部は赤くなり、水疱は若干広がります。
掻き壊すと傷になるので厄介です。

この痒い波が去ると、赤みは引いて水疱も消え、
何事も無かったように普通の肌に戻ってます。
ただその間も肌の奥で痒みのタネのようなものが
ジワジワと燻っているのは感じています。

も少し酷いときは全身どこかしらにある
ゴムの痕とかが痒くなる時もあります。
下着のゴム、靴下のゴム、ウエストのゴムのあと
それらが意味もなく痒くなったりします。

あとは肘の内側、膝の裏側など皮膚の薄いところ
じんわり汗をかくと痒みを感じたりします。

痒みに対して軟膏などを塗る時もありますが
ほとんど気休めです。

漆かぶれはアレルギー症状の一つ。
漆が付着した部分だけが発症するのではなく
場合によっては全身症状となります。

身体の中から湧き上がってくるような感覚があるので
例え皮膚の表面に何か塗ったとて、
それが抜群に効くとは思えません。

対処法としては、冷やすのが一番だと思います。

私の場合、症状は長くて2週間。
今回は多分1週間くらいで落ち着く気がします。

この10年で多少は耐性がついたのか
普段は皮膚についてしまっても
すぐに拭いておけばかぶれたりしないのですが
その時の体調と季節と漆の活性具合により
かぶれる時はかぶれます。

大抵は今のような梅雨の時期にかぶれています。
漆がモーレツ元気になっている季節。

それと汗をかく季節なので毛穴が開いて、
アレルギー物質が皮膚から侵入しやすいとか
単純に半袖で作業して露出が増えているからとか
整理整頓を怠っているからとか暑くて手袋しないとか
心当たりはありまくるので、かぶれないためには
基本の対策が大事ということでしょう。

中にはこの程度で済まない人もいます。
皮膚科に駆け込む方も見てきました。

金継ぎが流行って久しいですが
手軽に買える金継ぎキットの中に「かぶれることがあります」の一文を添えるだけで、本漆が入っているものも存在しているようで、不安を感じることがあります。扱いが軽いというか…。

天然の漆は素晴らしいものですが、そもそもは漆の樹からいただいた、貴重な樹液です。

ご自身でやってみたいと考える方は、保管方法、かぶれ対策、漆の良い部分だけでなく
扱いを間違うと大変なことになりかねない、天然漆ならではの危うさも、正しく知って欲しいと思います。

私のかぶれの話は、何かの参考にして頂けるなら幸いです。

過去に見てきた方の症例?についても、また機会があれば改めて書きたいと思います。

ガラスの欠け

当工房では、基本的にガラス製品の修理は承っておりません。

漆はツルツルした面に定着しにくく、その時にくっついたように見えても、乾燥時の収縮などもあって剥がれやすいので、なかなか修理するのが難しいのです。
というわけでガラスの器のお直しは現状全て、お断りさせて頂いているのですが、これは自宅の器なので実験的に修理をしてみました。


ガラスは補修した裏側から下地に使った漆の色が透けてしまいます。これも難しい理由の一つです。

見る角度によって、下地が見えたり隠れたりするので、器の印象そのものが変わります。

今回は小さな欠けでしたが、コツンと何か当てたらポロっとすぐに取れてしまいそうだったので、実際の傷よりも広めに漆で覆い金消し粉で仕上げました。


強度はいかほどなのか?実際に使ってみながら、経過観察していきたいと思います。
ガラス用漆というものも一応販売されているのですが…その定着の度合い、経年変化の具合なども分からないので、まだ手が出せないでいます。

ガラスの修理、難しいです。

金継ぎのきっかけ

 お客様から送られてきた割れた状態のコーヒーカップは、本来ならば捨ててしまいそうなそんな破損状態でしたが…、小さな破片も全部とっておいでで、ひとつひとつ大事に包んで送って下さいました。

 おかげで器は美しく生まれ変わり、再び持ち主様の手のもとへお返しすることができました。

 私が金継ぎをやるようになったのは単純に日本の伝統工芸が好きで金継ぎ作品の美しさに憧れて…、というのもありますが、モノをやたらと捨てずに直しながら長く使う精神に魅せられたのが大きいです。

 元々環境への関心は強かったのですが、大学の恩師から様々な学びを得てからは、さらに強く環境を意識をするようになったのとともに、現状に危機感を覚えるようになりました。

 この地球のサイクルを考えた時、今のままの大量生産と大量消費を続けていればこの先、必ず何かしらの歪みが生じてくると思います。近年、異常気象が日常的になっていたり、台風が超大型になってきてるのも、もしかしたら環境変化が始まっているサインかも。

 地球を守りたいなんて的外れな綺麗事を言うつもりはありません。・・・が、私が壊れてしまった形を直すことで捨てられて終わりそうだったモノや、諦めそうだった誰かの心を助けたいと、、そんな風に思いながらコツコツ金継ぎ修行をしています。

 とはいえ根本的に器好きなので、お客様からの預かりものを手にしては、「この器、可愛いなぁ…」なんて思いながらナデナデ、器を愛でながら行う作業は理屈抜きに楽しいものなのです。

経年変化のこと

 私はパソコンに向かうのが苦手なので、ちょっと気を抜くとすぐにブログの更新が止まってしまいます。季節が変わってしまいました。元気に暮らしています。コロナ渦による混乱も一時期に比べると少しは落ち着いてきたように見えますが、当工房は“工房”と呼んでいるとはいえ、団地の一角にある小さな部屋ですので、今後も配送でのやり取りをベースにさせて頂きたいと考えています。

 ホームページで「横浜」と書いているからか、ありがたいことに、ご相談いただくお客様の8割は横浜在住の方です。近くにお住まいであるならば、私の気持ちとしては我が家のリビングにお招きして、実際に修理したものを手に取って頂き、金継ぎしたカップで一緒にティータイムをしたいところなのですが、今はまだその余裕がないのが現状です(まず部屋の片づけをしないとですしね…)。

 いつかは金継ぎカフェ、実現したいと思っています。が、いつになるやら(?)。

金継ぎしたカップと言えば、ひとつ、いい味になってきた継ぎ痕をご紹介します。

まず直す前の破損状態はこちら↓

直し終えたのが去年の今頃です↓

銀粉を蒔いて、銀継ぎ仕上げとしました。直したては美しい銀の白っぽい色が映えていましたが、この色艶は経年変化で鈍くなります。それも見越して、銀にしました。というか私は経年変化するのが逆に好きで、自宅の器は金よりも銀や真鍮で仕上げることのほうが多いです。特に渋い色の器には好んで経年変化する金属を使用します。

一年使用して、良い感じに変化した現在がこちら↓

グッと渋く、器に馴染みましたね。

この経年変化を良しとするのかどうか、人によって分かれるところかと思いますが、私は個人的に変化の色合いがとても好きです。使われる頻度や、器が置かれている環境で変化のスピードは異なると思いますが、直したての頃の輝きは、何年も使っていると霞みがかかったようになるのが普通です。でも、その変化した姿こそ愛して欲しいと思います。

作られた時の状態でずっとピカピカしているものは、この世にはほとんどありません。モノは使われてこそ価値を増します。私はご依頼して下さった方が、お気に入りを再び使い続けることができるようにお直しをさせてもらっています。直す前よりも少し扱いに注意が必要かもしれませんが、せっかく直ったのだからと食器棚に飾っておくのではなく、惜しみなく使ってあげて欲しいと思います。

修理は基本的に本漆を用いて行っております(合成樹脂は使用していません)

仕上げについては、金・銀・真鍮と色漆などに対応しております。ご依頼される方の

意向を伺い、その都度、相談のうえで決めていきたいと考えております。

<ご依頼までの流れ>

まずはじめに画像などで破損の状態を拝見し、仮見積もりをさせて頂きます。その後

修理品を直接お持ちいただくか郵送して頂き、見積額を決定、修理となります。

<修理・メンテナンスできないもの>

当工房では、ガラス製品についてはお断りさせて頂いています。技術が追いついたら

お受けできるようになるかも知れません。その他、器の状況によりお断りする場合も

ございますことをご了承ください。