金継ぎが何年か前からブームのようになり、初めての方でも、難しい知識なしに始められるキットが東急ハンズなどでも手に入るようになりました。私はそういった品物を使ったことがないのですが、どうやら手に取りやすいキットのなかには本漆ではなく、石油を原料とした合成漆を使用しているものも少なくないようです。

手軽に始められるし、安価だし、なによりかぶれの心配がありません。入り口としてはとてもいいと思うのですが、石油由来なので食器への使用は、色々と心配が残ります。

その点、やはり天然素材の漆は安心です。

私が使用している本漆は、師匠の藤原啓介さんからすすめられた播与漆行さんのもの。漆はとても伸びがいい塗料(?)なので、私のように細々と作業している程度だと、この一本がしばらくもちます。

注意書きには、冷暗所または冷蔵庫で保管して下さい。と、あります。漆は生きています。夏場は特に、酵素の働きが活発になるため暑いところに放置しておくと発酵がすすみ、腐ったり、漆チューブが爆発することがあるとかないとか。

腐るのも嫌ですが、爆発したら怖すぎるので、私の漆の定位置は、我が家の冷蔵庫のすみっこです。なかなかシュールな画ですね。

かぶれの心配もあるし、保管の心配もあるし、水彩絵の具のようにサッと出してパッと塗って…というわけにはいきません。それなりに扱いにくいので、やっぱり最初は合成漆のほうがいいのかも?^^;

でも漆が、扱いにくいのは、漆が生きている塗料だからです。

漆が面白いのも、生きている塗料だからかもしれません。