陶器の兜

最近で一番思い入れが強いお直しの品物です。

陶器製の小さな五月人形。ツノ(?)の片方が折れてしまったとの事で今回、ご依頼を頂きました。

お客様の27歳になった息子様が初節句の時にご購入されたお品物で、今でも欠かさず毎年飾っているそう。
添えられたお手紙からも、お客様の丁寧な暮らしぶりが窺えました。

息子様への思いが詰まったお品物。
そんな大事なお品物を預けて下さり、嬉しいのと同時に、責任重大だなぁとドキドキしました。

ドキドキしながらお直し作業を行いました。その期間、4ヶ月くらい。(お預かりした頃はコロナの自粛などで息子の幼稚園も休園、一日中わんぱく4歳児が家にいるので作業がかなり滞ってました…)

無事にお直しが完了して、夏の盛りにお手元へお返し…するはずでした。けれどお客様が梱包を解いてみたら、箱の中で兜が再び割れていたそうです。ショックでした。

配送中の事故なのか、私の梱包が甘かったのか、割れたきっかけは不明ですが、いずれにしても接着が甘かった事が直接の原因であることには間違いありません。すぐに返送して頂きました。

それから再びお直し作業。食器ではないので今回は接着に化学合成接着剤を使用し、仕上げは漆と金消粉にしました。見た目はゴツくならないようにしつつ、見えにくい場所に和紙を巻いたりして補強もしてみました。前回よりガッチリついた様子。今回の作業は2ヶ月程度。つい最近、無事にお客様の手元にお返しする事ができました。

けれど何がきっかけでポロッと取れるのか分かりませんので、一応、お客様には経過観察をお願いしました。

いつも本当に勉強させてもらっています。器それぞれ事情が違うので、やってみないと分からない事が山ほどあります。それが金継ぎの難しいところでもあり、面白いところでもあります。

今回も、お客様にはご迷惑をおかけしましたが、とても勉強になりました。ご依頼頂いたことに感謝です。

また何年も兜が飾られて、ご家族の記憶を紡いでいけますように。

金継ぎのきっかけ

 お客様から送られてきた割れた状態のコーヒーカップは、本来ならば捨ててしまいそうなそんな破損状態でしたが…、小さな破片も全部とっておいでで、ひとつひとつ大事に包んで送って下さいました。

 おかげで器は美しく生まれ変わり、再び持ち主様の手のもとへお返しすることができました。

 私が金継ぎをやるようになったのは単純に日本の伝統工芸が好きで金継ぎ作品の美しさに憧れて…、というのもありますが、モノをやたらと捨てずに直しながら長く使う精神に魅せられたのが大きいです。

 元々環境への関心は強かったのですが、大学の恩師から様々な学びを得てからは、さらに強く環境を意識をするようになったのとともに、現状に危機感を覚えるようになりました。

 この地球のサイクルを考えた時、今のままの大量生産と大量消費を続けていればこの先、必ず何かしらの歪みが生じてくると思います。近年、異常気象が日常的になっていたり、台風が超大型になってきてるのも、もしかしたら環境変化が始まっているサインかも。

 地球を守りたいなんて的外れな綺麗事を言うつもりはありません。・・・が、私が壊れてしまった形を直すことで捨てられて終わりそうだったモノや、諦めそうだった誰かの心を助けたいと、、そんな風に思いながらコツコツ金継ぎ修行をしています。

 とはいえ根本的に器好きなので、お客様からの預かりものを手にしては、「この器、可愛いなぁ…」なんて思いながらナデナデ、器を愛でながら行う作業は理屈抜きに楽しいものなのです。

修理は基本的に本漆を用いて行っております(合成樹脂は使用していません)

仕上げについては、金・銀・真鍮と色漆などに対応しております。ご依頼される方の

意向を伺い、その都度、相談のうえで決めていきたいと考えております。

<ご依頼までの流れ>

まずはじめに画像などで破損の状態を拝見し、仮見積もりをさせて頂きます。その後

修理品を直接お持ちいただくか郵送して頂き、見積額を決定、修理となります。

<修理・メンテナンスできないもの>

当工房では、ガラス製品についてはお断りさせて頂いています。技術が追いついたら

お受けできるようになるかも知れません。その他、器の状況によりお断りする場合も

ございますことをご了承ください。